- そで
- そで【袖】〔「衣(ソ)手」の意〕(1)衣服の左右の腕をおおう部分。 和服では, 袂(タモト)を含めていう。
「~が長すぎる」「~を翻す」
(2)鎧(ヨロイ)の付属具の一。 肩から肘(ヒジ)を護るもの。(3)本体に対して付属部分。 物の左右に突き出た部分。 わきの部分。 (ア)牛車(ギツシヤ)・輿などの出入り口の左右の張り出した部分。 (イ)机のわきの部分。 また, そこにある引き出し。 (ウ)建造物・工作物の両脇の部分。 (エ)舞台の左右両端の部分。~うち合わ・す(敬意を表すために)両袖を重ね合わせる。「塀のかたにうしろ押して, ~・せて立ちたるこそをかしけれ/枕草子 76」
~交(カ)・う男女が互いに衣の袖を敷きかわす。 共寝する。「しきたへの~・へし君/万葉 195」
~返・す(1)袖を折り返して裏側を表に出す。 こうして寝ると恋しい人を夢に見ると信じられていた。「しきたへの~・しつつ寝(ヌ)る夜落ちず夢には見れど/万葉 3978」
(2)(舞などで)袖を翻す。「のどかに~・す所をひとをれ気色ばかり舞ひ給へるに/源氏(花宴)」
~反(カエ)・る袖が翻る。「楽浪(ササナミ)の比良山風の海吹けば釣りする海人の~・る見ゆ/万葉 1715」
~掻(カ)き合わ・す両袖を重ね合わせる。 身なりを整えてかしこまる。「問はれて, ~・せて/徒然 90」
~片敷・く(男女が互いの袖を敷きかわして共寝するのに)自分の衣だけを敷いて寝る。 独り寝をする。「別れにし妹が着せてしなれ衣~・きてひとりかも寝む/万葉 3625」
~にしぐ・る袖に時雨(シグレ)がふりかかる。 袖に涙が落ちるたとえ。「われながら思ふかものをとばかりに~・るる庭の松風/新古今(雑中)」
~に縋(スガ)・る袖をとらえてひきとめる。 同情をひいて助けを求める。 哀願する。「先輩知人の~・って生きる」
~にする手を袖に入れたままで, 何もしない。 おろそかにする。 冷淡にする。 すげなくする。「~された腹いせ」
~に露(ツユ)おく袖に露がかかってぬれる。 悲しみの涙で袖がぬれる。~にな・す「袖にする」に同じ。「わしがこなたにほだされてお主さまは~・し/浄瑠璃・五十年忌(中)」
~に湊(ミナト)の騒・ぐ泣く声とともに袖に涙が落ちる。「思ほえず~・ぐかなもろこし舟の寄りしばかりに/伊勢26」
~振り合うも=多生(タシヨウ)(=他生)の縁(エン)〔「振り合う」は「触り合う」とも〕道で見知らぬ人と袖が触れ合うのも深い宿縁に基づくものだ。~振・る(1)袖をひらひらさせる。 別れを惜しんだり, 合図をするしぐさ。「野守は見ずや君が~・る/万葉20」
(2)袖を振って舞う。「舞姫十人, 綾綺殿にて~・るけしき/今鏡(すべらぎ下)」
~纏(マ)き干・す涙にぬれた袖を共寝の枕にして乾かす。「~・さむ人もあらなくに/万葉2321」
~別・る袖を重ねて共寝をした男女が別れる。 袂(タモト)をわかつ。「白たへの~・るべき日を近み/万葉 645」
~を返・す「袖返す」に同じ。~を片敷・く「袖片敷く」に同じ。~を絞・る涙でぬれた袖を絞る。 ひどく泣くさまをいう。「契りきなかたみに~・りつつ/後拾遺(恋四)」
~を詰・める女子が成人または結婚して, 振袖をやめて袖丈を短くする。 袖を留める。~を連・ねる大勢が並んで行く。 また, 行動を共にする。~を通・す衣服, 特に, 新しい衣服を着る。「まだ一度も~・していない服」
~を引・く(1)そっと注意を与える。(2)人を誘う。~をひろ・ぐ物乞いをする。「道路に~・げん事もさすがなれば思ひかねて/太平記 33」
~をふさ・ぐ袖のわきあけを縫いふさぐ。 近世, 男女とも元服まではわきあけのある振袖を用いた。「袖などをふさぎて, 世の人に惜しまるるも/浮世草子・一代男2」
~を分か・つ人と別れる。 関係をたつ。 袂(タモト)を分かつ。
Japanese explanatory dictionaries. 2013.